仕事

福島大学の集中講義を終えて

 

10日間に及ぶ、福島大学での2本の集中講義が終了しました。

通常であれば、半期15コマをかけて行う講義を、5日間で行った集中講義。

講義の準備、学生との関わり等、また沢山の学びを得る事ができました。

 

さて、大学の教員になり、半期ではありますが、一応自分が担当した講義を無事終えることができたので、ここで、大学の教員として今感じていることを少し、書き残すとします。

 

まず、大学教員として、最も力を入れなければならないこと。

それは「学生を育てる」ということです。

もともと大学教員は「研究者」としてのポジションですが、近年は文科省を中心に、高等教育機関においても、「教育」に力を入れるべきとの考え方にシフトしてきています。

特に私が所属する教員養成を主とした大学では、「学生を育てる=教員を育てる」に直結しているのです。

 

自分が学生時代のことを、たまに思い返すことがあります。

私は中学校教員養成課程の美術科という、中学校の美術の教員を育てるための学科を卒業しました。

自分が大学という場で、一体どんなことを学んできたのかを思い返してみると、『教育』の本質に関わるようなことを学んだ記憶はほとんど残っていません。

それは、自分自身が真面目な学生ではなかったという事実も多少はありますが、同年代の友人に話をしても、みな声を揃えて私と同じようなことを話します。

 

現場経験の少ない学生に、小難しい理論ばかりで、一体この講義を通して、学生たちに何を学ばせたかったのかが全くわからないものばかりだったような気がします。

大学の授業で購入したテキストがまだ手元にありますが、今、読み返してみてもこれが本当に学生に最も適したものかと疑いたくなるようなものばかりです。

 

教員としての資質を育てる場所は、大学しかありません。

4年間という時間は、結構長いものだと思われるでしょうが、例えば、保育士になるための「造形」に関する講義というと、必修の講義はひとつしかありません。

半期15コマしかない時間の中で、将来保育士として活躍する学生たちに、造形表現活動に関する膨大な知識や技能を教え伝えなければならないのです。

そう考えた時、今、現場経験の少ない学生たちに、一体何を最優先として伝えなければならないのか。

教えたいことは山ほどあります。

しかし、全てをこの短い時間の中で伝えることは不可能なのです。

 

私が学生たちに伝えたい大切なこととして、『プロセス』と『ねらい』を挙げています。

他のことを忘れてもいいけれど、この2つのことだけは絶対に忘れないで欲しいと伝えています。

では、少し『プロセス』と『ねらい』についてお話してみたいと思います。

 

 

まず、『プロセス』とは何か。

 

例えば、子どもが「絵を自宅で描くこと」と、「保育所で描くこと」の違いはなんでしょうか。

絵を描くという行為自体はまったく同じです。

しかし、保育所で描く際には、必ず保育士が隣にいます。

その保育士が、子どもに常に寄り添いながら、子どもとともに絵を描いていくのです。

子どもが描きやすい環境を整え、描く時間を共有することで、子どもが描くプロセスを見取っていくのです。

 

子どもの絵は、一見何が描いてあるのかが、わかりにくいものです。

大人たちは”大人眼鏡”ばかりで子どもの絵を見ようとするので、「うちの子は、私に似て本当に絵がへたなんだから。」などと言う言葉を平気で口にします。

しかし、子どもが絵を描くという行為において、最も大切なのは、描かれた作品ではなく、描いた「プロセス」なのです。

子どもが絵を描くプロセスの中で、どんなことを感じ、考え、どんな思いを描こうとしているのか。

その子どもの思いを感じ取ることが大切なのですが、子どもの絵は表現がまだ稚拙なので、その思いは伝わりにくい。

 

だからこそ、保育士は子どもたちが描く「プロセス」を見取り、子どもたちが感じ、考えたこと、

絵に込めた思いを、大人たちへと伝える義務があるのです。それが保育士としての仕事なのです。

 

 

 

次に「ねらい」とは何か。

 

それは、子どもに造形表現活動を行う際には、必ず「ねらい」が存在しなければならないと言うことです。

例えば、子どもが絵を描くとします。そのねらいは、「絵の描き方を教える」ことではありません。

描いた絵が、上手か下手かなんて正直どうでもいい。上手に描く方法を教えることがねらいでないのです。

 

では、そのねらいとは何か。

それは、絵を描くプロセスの中で、子どもたちに「身につけて欲しい力」のことです。

例えば、「しっかりと対象を見ようとする力」、「最後まで諦めずに描こうとする力」、「自分が好きな色を自分で決めることができる力」、「自分が感じたことを自由にイメージとする力」など。

『絵を描くことの学び』ではなく、『絵を描くことを通しての学び』が大切なのです。

 

そういった、絵を描くことを通して、保育者は一体どんなことを学んで欲しいのか。

その「ねらい」をしっかりと考えた上で、保育を行っていくことこそが大切でなのです。

 

 

福島大学の学生たちが、授業最後のレポートとして書いたものが手元にあります。

その内容は、私が伝えたかったことをしっかりと、そして私の思い以上に理解してくれたものばかりです。

機会があれば、ぜひ皆さんにもご紹介したいと思います。

 

 

私は教員を育てるために、大学の教員へとなりました。

少しずつではありますが、その思いが伝わっていると感じています。

 

自分の目標を達成できるよう、今後も「学生を育てること」に専念していきたいと思います。

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